写真はヤワラー(中華街)のチューワッタナジムで修行中の大輝とラムソンクラーム。ラジャダムナンスタジアム&WBCムエタイのミドル級王者のラムソンクラームのさばきのうまいこと。
大輝の攻撃の起こりをとらえて、何気なく攻撃を無効化し、返しのパンチ、キックを的確に当ててくる。そこに一切力みがない。
時折笑みがこぼれ、ちょっと見には遊んでいるようにさえ見える。
この選手がディフェンスに徹したら、どうやって崩すんだ?と思わせるほどだ。
首相撲でも抜群のコントロール力を見せた。大輝は、
「同じぐらいの体重の選手だと遊ばれちゃうんで‥、少し軽いクラスとやってますけど、力じゃないんですよね」と苦笑しながら言っていた。
もちろん、試合になれば違う展開なんだろうけど。
大輝の名誉のために言っておけば、ミット打ちは王者たちにまったくひけをとらない迫力でした。
日本でいえば中学一、二年生ぐらいの2人が首相撲を延々とやっていたが、懸命になりながらも腕や手がガチガチになることはなかった。
そろそろ、日本でも「ムエタイの柔らかさ」を体系的に研究、指導する時期だと思う。
判定では勝てない。うまさで勝負したら負ける。
これは対ムエタイにおいてずっと言われてきたことだが、そこからの脱却をはかり、日本のキックボクサーにも技の美しさで魅了してほしい。
うまさでコントロールされると、後半の逆転があまり期待できないという試合展開は、
「一見さん」にとってあまりに魅力にかける。
逆に「柔らかさ」でも世界レベルになったとき、打撃系格闘技はもっと一般に届く存在となるはずだ。
全日本キック勢の闘いについて続きを書こうと思ったが、その前に翌日に行われたパーティについて。
これはタイ遠征の打ち上げであると共
に、WBCムエタイ関係者と、タイ人の王者たちを招いて、今後のWBCムエタイの展開についてのアピールがなされた場でもあった。
WBCムエタイの会長と副会長も来場した。会長はボクシングWBCの副会長でもあり、会長ホセ・スレイマンと合意のもと、ムエタイを普及させる活動を積極的に行っていくことを明言した。それには世界タイトルマッチを行い、ランキングを権威あるものとして整備する必要がある。「ギャンブルを離れた、スポーツとしてのムエタイを世界に認知させる」ことを目的としており、この9月にはロスで世界タイトル戦が予定されている。
写真の前列は、タイ人の王者たち。現役でメジャースタジアムの王者である選手も、そうでない選手もいるが、全員そろったときの圧倒的な雰囲気はただ事じゃなかった。
アヌワット、ゲーオ、ジョムトーン‥。
Tシャツやブレザーといった普通の服を来ているからこそ、逆に際立つ存在感。
ジョムトーンなんてまだ16、7ですよ。
ムエタイこそ最強と信じ、そのトップにいる者の矜恃が感じられた。
右の写真は今回勝利をあげた3人だ。今回の遠征は、マスコミ、一般参加の方共に満足度の高いものだったと思う。
3勝がすべてKO。しかし、大月、山本の2敗はまたもムエタイの迷宮に入り込んでのもので、
ただハッピーエンドではない、余韻の残る映画を観たような感じが胸に広がった。
さて、石川直生。
場内アナウンスで日本人だとわかると歓声が起きた。確かに街でもおもしろいほど間違われていたし。試合前の霧吹きのパフォーマンスといい、シャドウといい、ずいぶん博打師たちをつかんだようだ。
そのせいかどうか、よく2階から話しかけてくる。
2ラウンドを終わって、石川はおおよそ1対3の賭け率で負けている、だからガンバレ、だそうだ。
たまに相手に横を向かされることはあっても、首相撲でヒザ蹴りを放っているのは石川、実際にヒットさせているのも石川だから、この賭け率の差には驚いた。
やはり何度観てもムエタイの価値基準はわかりやすいとは言えない。
だが、倒しにいっているのは石川であり、その可能性も高いと確信していた。

6・17ラジャダムナン決戦は3勝2敗! ぞれぞれにテーマとドラマがある密度の濃い闘いだった。
○石川直生(3RKO)チャーンヴィットノーイ×
×大月晴明(判定3−0)グーピー○
○藤原あらし(4RKO)ルークゲーオ×
○前田尚紀(1RKO)モンコントーン×
×山本真弘(4RKO)ウィーラチャイ○
大きいのはヒジ・ヒザが得意な石川、ミドルが武器のあらしが勝ったことじゃないかと思う。ムエタイの真骨頂みたいな技を駆使しながらもムエタイに負けず、最後にパンチで勝つ。レベルの高い“打倒ムエタイ”ぶりだった。
石川は「1試合目の使命感は感じてます。“5連勝いけるんじゃねえの”っていう幸先のいい試合をしたい」という言葉通りの見事なKO勝ち。首相撲で組み負けず、ヒジをガシガシ打って、最後は右ストレートでKO。記者会見で「いろいろ噂があるけどちょっと待て、と。今はキックボクシングだろ、全日本キックだろ、という試合を見せたい」と語っていた石川だけに。この1勝は重い。
あらしは3Rに右ハイでグラつき、4Rにはパンチでダウンを奪われながら、その直後に凄まじいラッシュで大逆転KO勝利。真王杯の国崇戦といい、あらしの勝負強さには驚くばかり。4月に惨敗を喫しているだけに、今回は期するものが大きかったようで、バックステージでは涙も浮かべていた。聞けば奮起のきっかけが『野良犬 キックボクサー 小林聡の軌跡』を読んだことだったそうで、そこがまた嬉しかったっす。
大月はミドルでポイントを取られての判定負けだけど、よくある「ムエタイ独自のルール、判定に泣いた…」というのではなく、技術と集中力を総動員した勝負をして、それで負けたという形。「ムエタイルールだからしょうがない」じゃなく、敗因や課題は大月自身が一番よく分かっていると思う。
前田は強かった。以前“他団体王者狩り”をしてた頃の迫力が戻ってきたようだ。そのまま行け! 一方で真弘は首相撲からのヒザをまともに食らいまくり、最後はダメージというより「試合が成立しない」と判断されてのレフェリーストップという 感じ。ストップされた瞬間の唖然とした表情がすべてを物語っていたと思う。自分の持ち味を封じられて、わけの分かんない負け方をして。でも“打倒ムエタイ”はそこからしか始まらない。小林GMいわく「みんな一回はあれを味わうんですよ。オレなんか何回も味わってる(苦笑)」。これまで淡々と、飄々と闘ってきたイメージがある真弘だが、この負けで彼が何を感じ、どう変わるのかに凄く興味がある。
※タイ遠征については、水曜アップの『kamipro Hand』コラムでも書きます。

全日本キック・タイ遠征の取材でバンコクに来ております。選手団も金曜夜に無事、到着。今日はホテル内のジムで体重をチェックしつつ、それぞれ鋭気を養っているという感じ。みんなリミットまで1kg以内と調整は順調。藤原あらしにいたってはすでにアンダーだそうだ。なにしろこっちは暑いんで、普通なら走るところを歩いてるだけでかなり汗をかくらしい。試合直前の選手がそうなんだから、オレなんかもう大変ですよ。5分、外にいるだけでシャワー浴びたみたいになってる。
今回の遠征はタイで試合をするのが初めてという選手も多いんだが、みんなけっこうリラックスしてるんで驚いた。コメント取材でも、写真の石川ナオキックのように笑顔をよく見せてくれる。トップ選手が5人揃って試合をするってことで、小林GMいわく「みんなで来てると勇気が出るんでしょう。怖くなったときも“コイツらもそうなんだ”って思えるから」。実際、違うジムの面々が『全日本キック軍』として結束している感じは凄くする。ただし石川によれば「前田選手だけは目を合わせてくれない」そうなんだが。あと印象に残ってるのは、大月、前田、真弘の3人がホテルにあったケーキのショーケースを真剣なまなざしで見つめていたこと。計量が終わったら何食べるか考えてたんだろうか。
そんな選手たちに対する小林GMからのアドバイスは「オレのほうを見るな!」「オレに技術的なことを聞くな!」であった。まあでもマジメな話、今回のメンバーと今の雰囲気は、GMから見ても頼もしく感じるんじゃないだろうか。もちろんキックとは違うルール、採点基準のムエタイでは普段通りの力を出せば勝てるとは言い切れないわけだけど、そこも含めてそれぞれの“敵地でいかに勝つか”という方法論に注目したい。
全日本キックの新宿FACE2連戦は、初日(9日)も面白かった。とにかく寺戸だ。素晴らしかった。予想以上、期待以上のものを見せてもらうのは、やっぱり気持ちいいもんだ。対戦相手のチェ・ジンスンは魂叶獅にKO勝ち、藤原あらしには負けたものの判定まで持ち込んだ地力がある。今の韓国キック界でベルトを4本持っているというのは、これ相当の実力だろう。そんな相手に、1RKO勝ちだ。戦前は「KOで勝てたらベストだけど…」なんて思ってたんだが、ベスト以上の結果。それでも本人は内容に満足してないらしい。早ければ8月にも行われるというあらしとのタイトルマッチが、本当に楽しみになってきた。なんつうか今の寺戸は、“可能性”とか“未来”とか、そういう言葉のポジティブさをこれでもかってくらいに体現してると思う。
で、翌日(10日)は後楽園のMAキックを見に行ったんだが……。宍戸、まさかの敗北である。確かに城戸が頑張ったってことではあるんだが、しかし、まさか、よもや。今の宍戸は、何をやってもうまくいかない人の典型みたいだ。なんでこんなことになってしまうのか、本人でさえ途方にくれている感じ。考えてみると宍戸のポジションは、以前とはまったく違ってしまっている。上り調子の頃は、ひたすら強敵に立ち向かっていけばよかった。無我夢中でよかったというか。だけど今はオガケンやアンディ・サワーを追う立場でもありつつ、(MAXで負けた)尾崎や今回の城戸との試合では追われる側なのだ。相手は宍戸を研究し、“食ってやろう”という気持ちで向かってくる。そういう選手は実力以上の力を出す場合が多いわけで、そういう試合でどう闘うか、どんな気持ちで試合に臨めばいいのか。宍戸のような選手(というか人間)には難問だろうと思う。まあ他にも不調の理由はあるんだろうけど、とにかく苦しみ抜くことでしか光明は見えないんじゃないか。

「更新しなさすぎや」と漫画家のてらかわよしこ先生に指摘される通り、ふたたび日が空いてしまった。
キック&ムエタイはきのうから日をさかのぼって書いてみます。
6月10日は新宿FACEで全日本キック「CUB☆kics」の二日目。
超満員の大会のメインを飾ったのは第10代ミドル級王座決定戦だった。
中村高明が白川裕規から4度のダウンを奪ってついに戴冠した。
こう書くと中村の圧勝劇のように聞こえるが、中村は目尻を深く切っているし、中村のパンチが強いためずっとスリリングな展開だった。
というか、まれにみる血まみれのタイトルマッチ。
中村が白川が青コーナーに押し込んで攻めたてるシーンが何度も見られたが、そのすぐその下に陣取っていた私やてらかわさんの服には血痕が‥。
白いシャツを着てきてしまったアナウンサーの市川さんはもっとハデに赤黒い水玉模様
ができてしまった。
中村のヒジ&ヒザのエグい攻撃で、白川の頬骨は大きく腫れて、試合後はまるで別の人相。
藤原ジム勢の喜びようは、小林聡GMはじめ、ハンパじゃなかった。
前田尚紀なんて、こんなに感情を表すヤツだったんだ、と驚くほど。見てよ、このガッツポーズ。
31才の中村がラストチャンスと思い定めた気持ちを知っているだけに、自分のことのように喜んだに違いない。


