ゼア・ウィル・ビー・ブラッド(橋)

試写の段階からなぜかタイミングが合わず、見逃していた『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』をやっと見た。修斗も行きたかったんだが、今日見とかないと日程的に完全にアウトだったもんで。申し訳ない。まあ土曜の夜にこういう映画を見るっつうのは、ヒマでモテない30代にふさわしいというか。

20世紀初頭のアメリカを舞台に、孤独と強欲に身を焦がしながら成り上がっていく石油採掘者(ダニエル・デイ=ルイスが声質を変えて演じる)の物語。格調高い文芸大作にもできそうな題材だが、監督のポール・トーマス・アンダーソンは「欲望と野望の途中で正気を失った男を描いたホラー映画」と語っている。実際、不協和音バリバリの音楽からしてサイコホラーのような雰囲気。多用される長回しも緊張感を高める。主人公に対立するのは、狂信的なキリスト教で住民を導く牧師。一度目は教会、二度目は主人公の豪邸で展開される“対決”シーンは、ド迫力にして爆笑モノという、映画史上に残る名場面だ。

「オレには人間の最悪の部分ばかりが見える」と語るような男が主人公なのだが、観ていて清々しささえ感じてしまった。なぜかというと、非情で猜疑心に満ち、独善的な主人公をそのまんま描いているから。“それでも、この男の心の奥底には言い知れない悲しみがあった”みたいなことにはしてないわけだ。“こういう人間が、こういうふうに生きた”ってことをそのまま観客に見せる。善悪とか常識とか、そういう既存のモノサシに寄りかかってない。だから清々しい。ラストカットの見事さも含め、『レイジング・ブル』を思い起こさせるといえばいいのか。これと『ノー・カントリー』が作品賞を争ったんだから今年のアカデミー賞は素晴らしい。ま、授賞式の視聴率は悪かったみたいだけど。

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